【地方大学生のOBOG訪問のリアル】華麗なる先輩社員訪問!後編
前編はこちら↓
「ビジュアルが整っていない社員様を狙う」
このスローガンがぐるぐると頭の中を全力疾走しているにも関わらず
当の本人は微動だにできていない。
目標物が見当たらないのだ…
早くなんとかしなければ…ソイラテも底をついたことだし…
スターバックスで張り込みを初めて既に3時間が経過していた。
ちょうどその時、後ろの死角から声をかけられた。
「席、空きますか?」
後ろを振り向き視線を向けた先に立っていたのは …
手に持っているのは、A3資料が入りそうな大きなバッグ
身に着けているのは、青系スーツ
背丈恰好は特異ではなく、スポーツ経験も浅そうだ
そして、疲れた顔
間違いない、某第一志望群御社の社員だ 。
まさか向こうから飛び込んでくるとは。
飛んで火にいる春先のエリートとはこのこと。
ここで食い止めなければならない。
あわよくばオトモモチになりたい。
その為に、何か…何か一言でも言わなければ…
最初の一手が肝心だ。
最初の一手でその後の関係性もすべてが決まってしまう。
何か…心に残るようなことを言いたい。
あわよくば、エリート社員が後にクライアント先でネタにしてくれるような出会いを演出したい。
だが、出てこない。
気の利いた一言が咄嗟に出てこない。
何か…何か一言でも言わなければ…
「あの…BIZZタワー牛耳ってます?」
咄嗟に口から飛び出た自分の一言に度肝を抜かれた。
しまった。あまりにも急な展開に、押し込めていた素の自分が出てしまった。
必死に取り繕うとするも、混乱状態に陥った無能戦士の口からは後続の言葉などでてこない。
「あ、私、今こういった活動をしておりまして…」
大学名が入ったエントリーシートを見せることで「就職活動中」をアピールし、
相手側の警戒心を解こうとするも、ファイル中に数多溢れるどうでもいい書類が邪魔をして、
自身の潔白を証明する大学名入りESを見つけることができない。
そして、なぜか「就職活動」という言葉が出てこず、見ず知らずの人間に対し宗教勧誘時のような空気をぶつけてしまうチホジョ。
失敗だ。
飛んで火にいる春先のエリート社員を自分のオトモモチにできなかった。
もう終わりだ。
それどころか、警戒心まで抱かせてしまった。
無理もない。
ただ純粋に空いている席を探し求めている人間に対し、
「意味不明」を凌駕する「煽り」ともとれる狂気に満ちた返答をしてしまったのだ。
驚いた表情で私を見つめるエリート社員。
およそ一分、
およそ一分間の激しい攻防(正確に言えばチホジョの自爆テロ)であったが
その時間は永遠とも感じられた。
「え…?文春の記者…?」
やっとのことで言葉を発したエリート社員。
だが、自爆テロに巻き込まれた彼の返答も既に正気を失っていた。
「文春の記者」
斬新。斬新すぎるツッコミ。
一体この社員何者なのだ。
日ごろから記者に追い回されるような生活でも送っているのか?
この社員曰く、
「何かと騒がれているこの業界で、新しい小ネタを拾いたいと考える記者が
最も社員の警戒心を解くことができる就活生を装って自身の前に現れた」
つまり、
「センテンススプリング砲の銃口が自社に向いたのではないか」
と考えた末の一言であったそうだ。
チホジョ、
中々老けて見られることが多く、18歳の頃働いていた日本料理屋では、32歳子持ちだと思われていた経験を持つほどだ。
それに加え、先ほどの相手の出方を伺うような煽り文言。そう思われるのも無理はない。
だが、チホジョは瞬時に思った。
この社員は大当たりだ。
①異常なまでの警戒心
②刹那のやりとりから最悪のパターンを想定できる妄想力
③そして、砲撃から自社を守ろうとする愛社精神
尊敬に値する!
絵にかいたようなエリート社員だ!
もしかしてチホジョはとんでもない逸材を探し当ててしまったのではないか?
猛る気持ちと無理やり立ち上がろうとする鳥肌を抑え平静を装い、
さらっと自己紹介を完了させたチホジョに
忙しいであろうエリート社員は丁寧に時間を取ってくださり、その後も二回ほど
ES添削に協力してくれた。感謝の極みどころの騒ぎではない。
こうして、チホジョの記念すべき特攻OBOG訪問は幕を閉じた。
結局のところ、自爆テロは行ったが特攻はしていない。
余談であるが、
この社員様に添削していただいたESは全通だった。(広告、エンタメ系)
広告業界志望でなくても、広告業界に味方をつくることは戦場を生き抜くうえで非常に有効な手段だと考えられる。
辛い事もあるけど、
就活戦士チホジョは今日も元気です。
貴重なお時間頂きありがとうございました。